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観測史上最大......トンガの噴煙、成層圏を超えていた
噴火から30分で成層圏を抜け、中間圏に到達
トンガの噴煙が高さ58キロに達していたことがわかりました。高度50キロまで広がる成層圏を突破し、流星が燃焼されるとされる中間圏に達する高さです。噴煙の高さとしては、衛星による観測で史上最高となります。これまでの記録は、1991年のフィリピン・ルソン島で起きたピナトゥボ火山での噴煙の35キロでした。今回はその1.6倍に相当します。
「千年に1度」の噴火 「気温低下の恐れ」
1991年6月に起きたフィリピン・ルソン島にあるピナトゥボ山の噴火は20世紀で最大規模といわれ、大量に放出された噴出物が太陽エネルギーを遮ったため、世界的に気温が低下し、冷夏による農業被害が深刻化しました。日本では2年後の93(平成5)年に米不足が起き、「平成の米騒動」とも呼ばれました。タイ米などを緊急輸入する事態となったことを覚えている人も多いでしょう。今回も、パラソル効果による寒冷化で、数年内に世界的な食料危機も危惧されます。大気に放出された火山ガスに含まれる二酸化硫黄は大気中に存在する水と反応し、直径1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)より小さい微粒子となります。これは「硫酸塩エアロゾル」と呼ばれ、太陽の日射光を遮る性質があります。
噴火で発生した津波の高さは最大で15メートル
15日の噴火で発生した津波の高さは最大で15メートルに上り、首都のあるトンガタプ島など、各地の島の西側の海岸が被害。家屋の被害も深刻で、すべての家屋が倒壊した島や2棟を残して倒壊した島があります。火山灰によって水の供給に大きな影響が出ていて、安定的な飲み水の確保に努めているほか、通信は18日の時点で国内の一部にかぎって通話や衛星電話の利用ができる一方でインターネットは使えず、復旧作業が行われています。また、港の施設に被害が出ていて、空港では火山灰を除去する作業が続いています。
噴火前後
海底火山の海域には海面上に285ヘクタールの陸地がありましたが、陸地がほぼ全て消滅しました。
緑豊かな土地は、灰色に染まりました。
トンガ火山噴火による衝撃波が地球1周して再来
今日17日(月)の朝9時前から10時過ぎにかけて、日本全国で一時的な気圧変化がみられました。この気圧変化は、日本時間の15日(土)昼過ぎにトンガの火山島フンガトンガ・フンガハアパイが噴火した時の衝撃波「空振」によるものとみられ、今日午前には地球を1周して再び到達したようです。15日(土)夜に観測されていた急な気圧変化は2hPa程度の大きさでしたが、今朝の観測は大きい所でも1hPa差程度でした。一方、地球を反対回りで進んできた空振が16日(日)の18時から19時頃にも日本付近を通過することが予想されましたが、この時間帯には顕著な気圧変化はみられませんでした。
空振で津波が起こるメカニズム
今回、トンガの火山島フンガトンガ・フンガハアパイで15日(土)に発生した噴火は、過去1000年間の地球上で最大級とも推定されていて、非常に大規模な空振が発生した可能性があります。空振の進む最前面では圧力が高まり、海面は大気によって押し下げられます。最前面が通過した後は元に戻る反動で海面が上昇し、津波が形成されます。空振は海中を進む津波に比べて高速なので到達が早く、また後続の津波は長い距離を進む過程で重なり合い、大きくなった可能性があります。
「通常の津波」と違う点
- 到達の早さ ----- 日本へは、通常の津波による到達予想時刻よりも3時間程度早く到達
- 海面の昇降の時間間隔 ----- 通常、遠い外国からやってくる津波は、20分から1時間程度の周期でゆっくりと大きく昇降を繰り返します。今回の津波では数分から10分程度という短い周期で昇降を繰り返していて、遠地津波ではみられない特徴でした。
- 通常の津波が日本に向かう途中で通過する、ミクロネシアなどでの津波の観測値がかなり小さかった
今回のトンガ近海の巨大噴火は 過去1000年間の地球上で最大級とも推定
日本からトンガまでの距離はおよそ8,000km。これほど離れているにも関わらず、これだけ影響があることに驚きます。トンガの火山噴火の規模がどれほど大きかったのか窺い知ることができます。噴煙は高度19キロにも達したようです。過去の火山噴火による津波で最悪の被害を出したのは、1883年のクラカタウ火山で、超巨大な津波が襲い、36,000人が亡くなったといわれています。クラカタウ火山の噴火は、島の大部分が吹き飛んでしまうほどの歴史的な大噴火でしたが、今回の噴火は爆発音の”飛距離”ではるかに上回りました。クラカタウ火山では約5,000キロ離れたインド洋のロドリゲス島で爆発音が聞こえたそうですが、今回はトンガから9,366キロも離れたアラスカや、カナダ北部のユーコン州などでも聞かれました。ユーコン州では、音はとても大きく、大型トラックが通り過ぎたような感じで、1時間くらい続いたそうです。反対に、トンガからもっと近いハワイでは爆発音は聞こえなかったようなので、今後の究明が待たれます。
爆発音 トンガから9,366キロも離れたアラスカや、カナダ北部のユーコン州などでも聞かれた
噴火の様子
津波の状況 なぜ津波が来たのか原因は現時点では不明
日本国内
鹿児島県奄美市小湊 1メートル20(15日午後11時55分)
東京都小笠原村父島二見 90センチ(15日午後10時52分)
岩手県久慈市の久慈港 90センチ(16日午前0時8分)
福島県いわき市小名浜 70センチ(15日午後11時54分)
東京都八丈町八重根 40センチ(15日午後10時21分)
千葉県銚子市 30センチ(15日午後11時44分)
日本国外
太平洋津波警報センターによると、トンガの首都ヌクアロファでは約83センチ、米領サモアの首都パゴパゴでは約61センチ、の津波を観測。米ハワイ州カウアイ島でも最大約80センチの津波を観測。カリフォルニア州ポートサンルイスで124センチ、アラスカ州で最大85センチ。エクアドルではガラパゴス諸島などで50センチ。バヌアツ 1メートル40センチ、ニューカレドニア 1メートル10センチ。チリ チャナラルで、1メートル74センチ。ニュージーランド グレートバリア島で1メートル33センチ。オーストラリア ノーフォーク島で1メートル27センチ、ゴールドコーストで82センチ。
大噴火の衝撃波によるものと思われる急激な気圧変化
一旦は気圧の上昇(赤色の表示)が起きた後、すぐに気圧の下降(青色の表示)が起こり、同心円状にに伝搬している様子が現れています。概ね2hPa程度の変化です。衝撃波に特有の加圧(気圧上昇)→減圧(気圧下降)を捉えていると推定されます。ニュージーランドやオーストラリアと比べるとその規模感は相当なものです。
世界の気圧変化
日本では約2hPaの気圧変化、スイスでは2.5hPa、イギリスでも約2hPa、またニュージーランドでもそれより大きな気圧の変化があったと伝えられています。
ニュージーランドの気圧変化
急激な気圧変化の後、20:00過ぎから、海面が小刻みに変動
噴火は15日午後5時10分(日本時間午後1時10分)ごろ
南太平洋の島国トンガ沖(首都ヌクアロファの北約65キロ)の海底火山(フンガトンガ・フンガハアパイ)が大規模な噴火を起こし、トンガ気象当局は15日、全土に津波警報を出しました。フンガトンガ・フンガハアパイは、先月末から活発な活動を続けていました。噴煙の高さは上空15000m前後まで達したと推定されています。海底火山は14日にも大規模な噴火を起こしており、火山灰やガスなどが海上から上空に噴き出ていました。ヌクアロファは火山灰に覆われ、トンガ国内では電話の通話が困難になっているようです。同火山は昨年12月20日から活動が活発になっていたが、今月11日に休止状態との宣言が出されていました。そして、14日に再び噴火が発生していました。
気象衛星がとらえた噴火の様子
火山の位置