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3月30日 21:30頃 東北東 高度20度
「かんむり座T」の新星爆発について、その兆候が顕著に
かんむり座Tの平常光度はおよそ10等で、小型の天体望遠鏡でも観測できる明るさです。そのため普段から多くの観測者によって観測されていますが、2015年くらいから光度が0.5等くらい明るくなり、色も少し青くなりました。この現象は1946年の爆発の8年前の1938年にも見られていたことから、いよいよ今回の爆発の時が近づいていることを予感させるものでした。
その後の明るさは約110日の周期で9.5等から10.2等くらいの間の振幅を繰り返しながら推移していましたが、2023年2月ごろから徐々に光度を落としていきました。この減光傾向はV等級よりB等級で顕著で、それまでより多少赤くなってきていることもわかりました。この現象も前回は1945年1月ごろに見られていて、およそ400日後に新星爆発が起こったのでした。今回は2023年2月ごろから減光傾向が見られたことから、誤差も含めて今年2月から9月の間で新星爆発が起こるとの予測が出されました。
かんむり座Tの平均光度は、減光傾向が始まった昨年2月ごろはV等級でおよそ9.9等でしたが、今年3月現在では10.4等ほどになっています。B等級では減光がさらに顕著で、11.0等から11.8等くらいにまで暗くなっています。この変化は1945年から1946年にかけての変化とまさに同様で、1946年の爆発でもB等級でおよそ11.8等くらいまで下がった後に爆発が起こっています。
1946年2月の際は爆発時の記録がよく取れていませんが、その前後の観測によると、爆発直前は10.4等くらいだったのが、爆発から1日後には6等に、2日後には3等になっています。つまり、増光スピードは1日で3.4等ほどと思われます。そして極大等級を過ぎるとすぐに減光が始まり、1日に約0.5等のスピードで減光していくと思われます。これは新星のなかでも減光がかなり速いものと言えます。そのため、かんむり座Tは増光の情報があれば大至急で観測しないと見逃してしまう可能性が高いです。とくに2等級で輝く極大期は1~2日程度しかないと思われます。
近接連星 過去の爆発
通常は約10等級ですが、これまでに2回の爆発が確認されており、1866年5月12日には2.0等、1946年2月9日には3.0等に達しています。
このような新星爆発を起こす天体の正体は近接連星で、片方の星からもう一つの星へ流入したガスが核融合反応で爆発することによって起こります。一般の近接連星では伴星から白色矮星に直接ガスが流れ込んでいきますが、「共生星」であるかんむり座Tの場合、赤色巨星から流出した水素ガスが連星系全体を取り巻きながら白色矮星の周りに降着円盤を形成し、やがて白色矮星の表面に溜まっていきます。溜まった水素ガスが臨界量を超えて核融合爆発を起こすと新星として観測されます。
この爆発によって白色矮星の表面に溜まった水素ガスのほとんどは吹き飛ばされてしまいますが、新たなガスが溜まって臨界量を超えると再び爆発が起こります。通常、爆発の間隔は数千年から数十万年もかかりますが、白色矮星の質量が大きい場合や質量流入が大きい場合などはこの間隔が狭くなる場合があります。かんむり座Tではおよそ80年ごとに新星爆発が起こると考えられています。
新星爆発の予報日 数日間は肉眼で見ることができ、双眼鏡で観察できる状態が1週間ほど続く
2024年の2月から9月の間