亜熱帯モード水
大気と海洋が接している海面では、大気と海洋の間で二酸化炭素の交換が行われており、海洋全体としては大気から二酸化炭素を吸収しています。海洋中に吸収された二酸化炭素は、海洋の循環や生物活動などにより海洋内部に蓄積されていきます。1990年代以降、北太平洋亜熱帯循環域が蓄積した二酸化炭素蓄積量の総量は1.47±0.34億トン炭素/年でした。亜熱帯モード水は、大気から大量の二酸化炭素を取り込んだ表面海水が、冬季の海面冷却により海洋内部に沈み込むことで形成され、海洋内部への二酸化炭素蓄積の主要な要因となっています。亜熱帯循環域北部では、亜熱帯モード水や深さ300~800m付近にみられる北太平洋中層水と呼ばれる水塊が分布しているため、より深くまで二酸化炭素が蓄積しており、1年あたりの二酸化炭素蓄積量が大きくなっています。
海洋は大気の約1000倍という大きな熱容量
1961年以降に気候システムに加えられた熱の80%を超える部分は海洋が吸収していると考えられています。しかし、大気と比べて非常に多くの熱を海洋が吸収しているにもかかわらず、海洋の温度変化は大気に比べて緩やかであり、世界の平均気温においても、北半球と南半球に分けてみると、海洋の割合が大きい南半球の上昇率が小さいという結果が得られており、海洋は大気の温暖化の進行を大きく緩和していると考えられます。
冬季の海面冷却が弱まることによる影響
冬季の海面冷却による海洋内部への沈み込むが弱くなり、亜熱帯モード水の層が薄くなることで、CO2の吸収量が減少することが予想されます。大気中のCO2濃度は、今後は冬季の寒さが弱まることで加速度的に増えていく可能性が高いと思われます。