「優勝なんか一切、目指しません。僕は!」
「真っ先に『変えていく』とはっきり言い切ることで、注目を集めるとともに本気度の高さを伝え、関係者をその気にさせる」という管理職に有効なテクニック。「これからは僕が監督像というものを変えていきます」とコメント。最後の「変えていきます」というフレーズだけ力強くしっかり発声した点も、ビジネスパーソンがプレゼンテーションのときなどに使えるテクニック。「最初と最後に同じフレーズを繰り返して強調する」という話術は、メッセージ性を高める基本テクニックの1つ。
「昨年、現役復帰を目指して受けたトライアウト前に日本ハムの球団の方から、『新庄さんお元気ですか? トライアウト頑張ってください。いつかまた会える日を楽しみにしています』と1通のメールが来たんですよ。『あの1通のメールには必ず何かある』と自分で勝手に信じて、1年間12球団2軍選手のプレーを一生懸命自分で勝手に勉強して。『こういう姿は誰かが必ず見てくれている』と信じていました。10月12日に何と僕が描いていた監督の話をいただいて、『本当にやってきてよかったな』という気持ちでしたね」。「優勝なんかいっさい目指しません、僕は。『高い目標を持ちすぎると、選手というものはうまくいかない』と思っているんですよ。一日一日地味な練習を積み重ねて、シーズンを迎えて、何気ない1日を過ごして勝った、勝った、勝った。それで9月あたりに優勝争いをしていたら、『さあ優勝を目指そう』
「(新人選手だけでなく)全員がドラフトでかかった選手だと思ってるんで、レギュラーなんて1人も決まっていません。新人、2年目、3年目の選手がキャンプでガッと伸びたら全部若い選手で固めるかもしれないし、『開幕投手が誰』とかまったく決めてないし、今年入ったドラフト1位の子が開幕投手で投げているかもしれないし、そういった争いをどんどんさせたいと思います」 「選手の顔と名前、まったく知らないんですよ。ただ1年間勉強してプレーはしっかりインプットしています。だからキャンプに行って顔と名前とプレーの答え合わせをして、いいチームを作っていきます。だからみんな(スタート)ラインは一緒。そのためにはキャンプに入るまで(が勝負)。このスタートラインに入ったときには、ほぼほぼレギュラーは決まってると思うんですよ。だからオフシーズン、自分でいろいろ考えて体を作って、頭の中をアップデートして、みんなで楽しく厳しく……まあ厳しくはなると思います。僕が(現役時代)そうやってきたんで。そういう気持ちでオフシーズンを過ごしてください。お願いします」
1通のメールに意味を見いだして行動したこと、可能性を感じて何の約束もないまま1年間勉強をしたこと。これは決して「運がいい」わけでも「勘違い男」でもなく、チャンスをものにできる人ならではの嗅覚のようなもの! 公平な目で見ていくこと、チャンスは平等に与えること、オフシーズンから勝負がはじまっていること、野球ができればいいというわけではなく人間性を大切にしていくこと。