開花はソメイヨシノより早く、例年3月中旬に見頃を迎える寒桜
春になれば桜、桃、菜の花など色々な花が咲き誇り、見どころがいっぱいあります。それなのに、花見といえば桜の花見をさすのはなぜでしょう? それは、平安時代より桜が花の代名詞になっているからです(奈良時代は、花といえば梅や萩をさしていました)。平安の貴族は桜の花に心を躍らせ、桜を愛でては歌を詠み、宴を開いて楽しむようになりました。また、農民にとって花見は豊作祈願の行事でした。古来、田の神様は冬になると山へ行き、春になると里へおりると考えられていました。「桜」の「さ」は早苗、早乙女、皐月などと同じように稲や田の神様をさし、「くら」は神様の座る場所という意味で、春になっておりてきた田の神様が宿る木とされていたため、桜のもとで田の神様を迎えてもてなし、桜の咲き方でその年の収穫を占ったり、桜の開花期に種もみをまく準備をしたりしていました。やがて、江戸時代になると、春の行楽として花見が庶民の間にも広がり、酒を酌み交わす花見になっていきました。三代将軍家光が上野に桜を植え、八代将軍吉宗が隅田河畔や飛鳥山を桜の名所にし、花見の場も増えました。園芸が盛んなこの時代に品種改良が進んだことで、身近な場所で花見が楽しめるようになったのです。
冬に咲く桜「寒桜」
日本の春の花というイメージが強い桜ですが、冬に咲く種類があります。その一つが「寒桜」と呼ばれている桜です。その誕生に関しては、寒緋桜と山桜の雑種との交雑で誕生したという説と、寒緋桜と大島桜の雑種の交雑で誕生したとする説があります。寒桜の花言葉は「気まぐれ」「あなたに微笑む」の2つです。「気まぐれ」は、春の花とされている桜なのに冬の時期に咲くところが、当時の人たちに「気まぐれな花だ」と思われたのが由来とされています。「あなたに微笑む」は、早咲きの花を見て「今は寒いけど、春はすぐそこにまで来ている」と思った人たちが、ふと顔をほころばせたことから生まれたのでしょう。