新型コロナの後遺症「LONG COVID」
LONG COVIDは、単一の病態ではなく、実際には4つの病態が複合的に絡み合った病態ではないか、ということが分かってきました。イギリスの国立衛生研究所(NIHR)
(1) 肺、心臓への恒久的障害
(2) 集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS)
(3) ウイルス後疲労症候群(post-viral fatigue syndrome)
(4) 持続するCOVID-19の症状
フランスからの報告
新型コロナを発症してから約110日後に電話インタビューで回答した120人の回復者のうち、約3割の人で記憶障害、睡眠障害、集中力低下などの症状がみられた。
イタリアからの報告
新型コロナから回復した後(発症から平均2ヶ月後)も87.4%の患者が何らかの症状を訴えており、倦怠感や呼吸苦、関節痛、胸痛、咳、嗅覚障害、目や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、味覚障害、頭痛、痰、食欲不振、ノドの痛み、めまい、筋肉痛、下痢などの、新型コロナの急性期にみられた症状が持続していた。
日本 国立国際医療研究センターからの報告
国立国際医療研究センターに入院していた新型コロナ患者に退院後に電話インタビューを行い、それぞれの症状についての症状の持続について詳細に聴取した。酸素投与を受けた中等症患者が27%、人工呼吸管理を受けた重症患者が8%、つまり大半は軽症患者です。「(4)持続するCOVID-19の症状」に関しては、発症から60日経った後にも、嗅覚障害(19.4%)、呼吸苦(17.5%)、だるさ(15.9%)、咳(7.9%)、味覚障害(4.8%)があり、さらに発症から120日経った後にも呼吸苦(11.1%)、嗅覚障害(9.7%)、だるさ(9.5%)、咳(6.3%)、味覚異常(1.7%)が続いていました。また、急性期にはなく後から嗅覚障害が出現した人もおり、発症から92日経ってから嗅覚障害が出現した人もいました。
また、「(3)ウイルス後疲労症候群」に関連した症状として脱毛についても聴取が行われており、全体の24%で脱毛がみられました。脱毛の持続期間は平均76日で、発症時には全くみられないものの、発症後30日くらいから出現し、発症後120日くらいまでみられることがあるようです。今回の報告と、これまでの海外の報告とを比較してみると、「(4)持続するCOVID-19の症状」に関しては、イタリアの報告よりもそれぞれの症状の続く頻度は低いようです。一方で脱毛についてはフランスからの報告の頻度とほぼ一致していました。
新型コロナ感染者は世界で4500万人を超えており、まだまだ増え続けています。ほとんどの人は回復していますが、一方で回復者の中にはこうした後遺症に悩まされる人が一定の割合でいるという事実が、社会に与えるインパクトは非常に大きいものと考えられます。「後遺症は怖い」とやみくもに恐れる必要はないと思いますが、後遺症の実態を考えれば「若いから感染しても大丈夫」とは決して言えないでしょう。後遺症の症状に対する有効な治療法はない以上、新型コロナに罹らないことが最大の予防になります。新型コロナの流行が始まってもうすぐ1年になろうとしています。そろそろ感染対策に対する意識も緩んでしまう時期ですが、Withコロナの時代はまだまだ続きそうです。「手洗い」「咳エチケット」「屋内でのマスク着用」「3密を避ける」といった感染対策を今一度徹底しましょう。