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ペロブスカイト太陽電池とは
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト構造を持つ材料で製造された太陽電池です。従来型のシリコン系太陽電池や化合物系太陽電池に迫る変換効率を持ちます。ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性がある点が特徴です。シリコン系太陽電池が設置困難なビルの壁面や耐荷重が低い屋根にも設置できます。
スピンコート技術(高速回転で生じた遠心力で薄膜を作る)で比較的容易に製造できるため、太陽光発電の利用可能性を広げる電池として注目を集めています。
ペロブスカイトとは?
ペロブスカイトは、独特の結晶構造を持ちます。ペロブスカイト太陽電池は、この構造を発電層に用います。
ペロブスカイト太陽電池の仕組み
ペロブスカイト太陽電池は、その他の太陽電池と同様に「発電層」「電極」「正孔(ホール)輸送層」「電子輸送層」で構成されます。発電層(ペロブスカイト層)を中心に正孔輸送層と電子輸送層があり、一番外側に2つの電極が配置される5層のサンドイッチのような構造です。ペロブスカイト太陽電池に太陽光が当たると、発電層で電子と正孔が発生します。電子は電子輸送層を経由してマイナスの電極へ、正孔は正孔輸送層を経由してプラスの電極へ輸送され、電荷の移動により電流が発生して電力が生じる仕組みです。
ペロブスカイト太陽電池と既存の太陽電池の比較
太陽電池は、大きくシリコン系太陽電池、化合物系(CIGS)太陽電池、有機系(有機薄膜)太陽電池に分けられ、ペロブスカイト太陽電池は有機と無機のハイブリッド型太陽電池に位置付けられます。
現状、変換効率やコスト面でシリコン系太陽電池が優れており、太陽電池分野の95%のシェアを占めています。有機と無機のハイブリッドであるペロブスカイト太陽電池は、有機系太陽電池が持つ軽量性やフレキシブル性を備えつつ、近年の研究・開発により変換効率が飛躍的に向上しました。コスト面や耐久性の面でも研究が進んでおり、シリコン系太陽電池に代わる次世代の太陽電池として期待されています。
ペロブスカイト太陽電池のメリット
ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池と比較して次のメリットを持ちます。
① 製造コストを抑えられる
② 軽量で柔軟性がある
③ 弱い光を電力へ変換できる
④ 材料を国内で調達できる
① 製造コストを抑えられる
ペロブスカイト太陽電池は少ない工程で製造できるため、製造にかかるコストを削減できる点がメリットです。太陽電池で使用されるペロブスカイト膜は、塗布技術を用いて比較的簡単に作れることから、最終的な太陽電池の価格の低下につながります。また、材料のペロブスカイトにレアメタルは利用されていません。ペロブスカイトは合成材料の一種であり、溶解処理で製造できる点も製造コストを抑えられる要因です。
② 軽量で柔軟性がある
ペロブスカイト太陽電池は、ポリマーシートなどの軽量基盤への塗布や印刷で製造できます。軽量性や柔軟性を確保しやすい点が特徴です。現在主流のシリコン系太陽電池はシリコンウェハー部分が割れやすいことから、基盤にガラスが採用され、ポリマーシートで挟み込んで強化しています。そのため、製品に一定の重量があり、柔軟性がない点がデメリットです。一方、ペロブスカイト太陽電池は小さな結晶の集合体が膜となって構成されます。シリコン系太陽電池と比較すると軽量な太陽電池を製造でき、折り曲げや歪みにも強い側面を持ちます。建物の窓や外壁、電気自動車、IoT機器、ドローンなど、様々な場所での活用が可能な太陽電池です。
③ 弱い光を電力へ変換できる
ペロブスカイト太陽電池は光の吸収力が強く、エネルギーの変換効率が高い点も特徴です。発電層内で発生した電子と正孔が電極までたどり着く距離が短いため、ロスなく発電できます。そのため、曇りの日や室内など光が弱い状況下でも発電が可能です。また、フィルムなど薄膜型太陽電池である特性を活かして積層電池を開発できれば、より効率的な発電も可能となるでしょう。
④ 材料を国内で調達できる
ペロブスカイト太陽電池の主な材料であるヨウ素は、日本が世界第2位のシェアを占めています。サプライチェーンを海外に依存せずに確保できるため、経済安全保障の観点からもメリットがある太陽電池です。
ペロブスカイト太陽電池が抱える課題
ペロブスカイト太陽電池は複数のメリットがある一方、いくつかの課題を抱えています。
- 大面積の運用が難しい
- 寿命が短い
- 耐久性が低い
ペロブスカイト太陽電池は「耐久性」と「安定性」が課題です。現段階の技術では大面積にペロブスカイトの膜を均一に製造するのは難しく、変換効率が下がるという課題が報告されています。また、ペロブスカイト太陽電池は劣化が早く、現状、ペロブスカイト太陽電池の寿命は5年ほどとされており、今後、実用化に向けてシリコン系太陽電池と同等の耐久性が求められます。